妖鳴町のはずれにある「さざめ森」

ここは人間とは相入れない妖怪達が住む場所
凶暴な妖怪も出るために普通の人は近づきすらしない

夜、そこに大きな太鼓を担いで森に入る男の人影があった
真っ暗で足元もよく見えない森の中
彼は楽しそうな足取りで奥へと進んで行く

周りが木や草しか見えなくなった所で彼は立ち止まった

「ここなら喰える。」

そっと呟く
そんな時、肩に担いでいた太鼓が宙に浮かんだ
いつの間にか両手には桴があった。

そして


トントントン
トトン、トトン

太鼓を軽く鳴らした
集まるのは小物
力の弱いやつら

こんなんじゃ全然足りない

ドンドンドン
ドドン、ドドン

次は太鼓を少し強めに鳴らした
それなりに強いのも混ざっている

でも全然、まだまだ足りない

もっと…もっと強いやつ！

ドン！ドンドンドン！！


森がざわめく
大きな妖怪
人など簡単に飲み込んでしまいそうなほど大きな妖怪が太鼓の音に反応して森の奥から這い出てきた

「出た出た…！」

彼はどこか嬉しそうな表情で太鼓の音に集まった妖怪達を見た

「それでは、いただきます♪」




彼はとこにいた妖怪達を無差別に喰い殺していった

彼は妖怪達の返り血で真っ赤に染まった
そして

「…ご馳走様。」

月の光を浴びながらも彼はその場を去った



残るのは鉄錆の匂いと嵐の前の静けさのみ

[2回]